2024.02.26 - 2024.03.03
山田秀樹
そこに 咲いてしまった花
子供の頃 いつも通っている田舎道の道端に
小さなチューリップが 一輪だけ咲いているのを
見つけたことがある
「チューリップというのは 花壇にしか咲いていない花」
そう思っていた私は その姿に 小さな驚きと
そして不思議な愛おしさを覚えた
大人になり
平凡な毎日の中に埋もれていった
幼い時の ほのかな記憶
それを思い出させてくれるのは
なぜか不似合いな場所に咲く
路傍の花
道路の側溝 排水口
アスファルトの割れ目
廃墟の壁 ブロック塀の穴
「そこに 咲いてしまった花」は
「ここに 生まれてしまった自分」を
映す鏡のような気がする