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2023.05.08 - 2023.05.14
Tim Porter
Bangkok Still Life,1988


In 1988, Tokyo-based photographer Tim Porter gained access through special permission
to a privileged space: the Siriraj Hospital in Bangkok, Thailand. For one week, he had the
opportunity to photograph surreal specimens of humanity – conjoined twins. Preserved in
formaldehyde and kept in the collection of the Congdon Anatomical Museum, he carefully
shot his subjects through their glass cocoons, eliminating all traces of location, time and place.

Website (https://www.timporterstudio.com)
Instagram (https://www.instagram.com/timporter.tokyo)

1988年、東京を拠点に活躍する写真家Tim Porterは、タイ王国バンコクのシリラート病院解剖学博物館を撮影する特別許可を得た。一週間のみだったが、結合体双生児などの超現実的な人体標本を撮影することができた。博物館のコレクションのホルマリン漬けされた標本を、いつどこで撮影されたかの痕跡が残らないようにPorterはガラスケース越しに注意深くシャッターを切った。

写真は一見子供たちのポートレートのように見える。しかしよく観察してみるとその身体はグロテスクで恐ろしく、悲しい。普段行かないようなところに行くとさらに見えてくる···。二人の子供がやさしく抱き合っているポートレートは、実際は結合体双生児の瓶詰めだ。死産か、それとも出産に至らなかったのか。皮膚の感触、骨格構造の発達、手足、目や頭の形などが少しずつ見えてくる。身体は“普通”になるほどより抽象的だ。私たちは一見して子供とわかる姿に人間性を与えようとする。しかし結合体双生児の切ない肢体不自由な身体は、最強のホラー映画文化のある今日の社会においてより消化される。どちらのタイプのイメージも受け入れるのはそんなに簡単ではない。アメリカ人写真家Andres Serranoのスキャンダラスながら詩的なMorgueシリーズや、教室やスパの妄想的なインテリアを撮影するカナダ人写真家Lynne Cohenの作品を連想するかもしれない。Porterのシリーズのプリントサイズはとても重要だ。プリントは超現実さを見せるに十分な大きさだが間近でよく見なければ何が撮影されているのかわからない微妙なサイズ、しかも最高級の画質だ。もし西洋で流行りの“美術館サイズ”でプリントされていたら、大袈裟で無神経な、あるいはサーカス風のイメージになっていたかもしれない。Tim Porterは被写体に対して最大の敬意を払う。そしてその姿勢は作品に表れる。PorterのStill Lifeシリーズで被写体がガラス瓶に入っているのは間違いないが、現実を取り除く彼の撮影手法は作品の超現実レベルを際立たせている。これは普通のポートレート写真ではない。

しかし、この自然の無慈悲の陰でPorterの写真には穏やかさが見られる。一連の作品には瞑想ともいえる平穏さを感じる。アジアで撮られた写真とわかっているので、東方の宗教、哲学あるいは精神的な影響を作品に見ることができる。数十年前に日本に移住してからPorterの写真の手法は変化している。米国やカナダに住んでいた時、1970年代の彼の作品は構造、輪郭、光、影の構成に特に優れていた。同じようなタイプの写真家として、Lisette Model、 Henri Cartier-Bresson、 Lee Friedlander、Robert Frankなどが挙げられる。しかしPorterは東京の東洋文化に身を投じてから、光と空間にこだわりながらドキュメンタリー写真の撮影でアジア諸国を回っている。Eugene Atgetのパリの庭園に対する情熱と同様に、Porterは東京周辺の日本庭園を探求している。彼の日本庭園の作品には瞑想的要素があって、私たちに彼の作品の空間に対して視覚的な探求を、呼吸をさせる。光は宗教であり、超現実的で美しい。同じ光の質は初期のStill Lifeシリーズに見られる。柔らかく光輝く水中でたやすく安らかに漂いながら湯あみをする。そしてこの安らぎには力がある。そしてTim Porterの写真にも。

Tim Porter「