2021.06.07 - 2021.06.13
丸山秀人
擬似昼景
映像の撮影技術に擬似夜景と呼ばれる手法がある。
昨今のデジタルほどの感度もなく、限られた照明の力では舞台を賄いきれない。
だが物語が夜であることを要求している。
ならば、昼を夜のように撮ってしまおう。
映画は虚構の世界。観客に夜と思わせたらしてやったり。
だが物語の力に助けられているものの、それはやはり擬似であり夜のように見えるがどこかおかしい奇妙さを湛えている。
その不完全さは不思議と心を捉え、不意に私の意識に現れる。
逆に、もし夜を昼のように撮ったらどう見えるだろうか?
1秒24コマ、シャッタースピード1/50に縛られた映像の世界では限界があるが、写真ならその壁を超えられる。
奇妙さも含めて再現できないか。
露出計も反応しない漆黒の闇の中、虚構の昼を再現すべく、シャッターを開く。
降り積もる微かな光に祈りを込めて。
丸山秀人 1983年 新潟県出身