2020.02.10 - 2020.02.16
篠塚 祐介
Photo Beach Combing
たのしいフォトビーチコーミング入門
「あらゆることは時間とともに動いてゆくが、患者は無時間の岸辺に打ち上げられるのだ」
ヴァン・デン・ベルク『病床の心理学』
JR横須賀線鎌倉駅で車両を降りたあなたは、小町通り側から改札を出る。そのまま右手の交番を通りすぎて若宮大路を進む。一の鳥居まで来たところで歩道に砂がたまっているのを見て、だんだん海に近づいていることを実感する。光が白っぽくなり潮くさい風が吹いてくる。
ファミレスのある丁字路を渡って、砂浜につづくコンクリートの階段をくだる。空の高いところをトビが飛んでいる。遠く稲村ヶ崎の向こうに白く雪を頂く富士山が眺望できる。小さなカーブをいくつか刻みながら、貧相な滑川が海に流れこんでいる。
波打ち際にはたくさんの紙片が散らばっている。沈んだ舟から打ち寄せられたもの、川に捨てられたどり着いたもの、ずっと前から海流を漂っていたもの。ここがフォトビーチだ。あなたはつめたい海水にくるぶしまで浸かりながら、忘れたことさえ思い出されない誰かの写真を拾いあげる。
〈プロフィール〉
篠塚 祐介Yusuke Shinozuka 1982年横浜生まれ。夜の写真学校8期卒業。主な展示に、「ike:pocha」(Place M 2008)|「ike:pocha」(TAP gallery 2014)。