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2010.07.05-07.11

第22回写真の会賞 [写真の会賞展]

溝部秀二 「here and there - ソウル/東京」

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SEOUL/Ewha Womans Univ. // TOKYO/Harajuku // May.2006
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SEOUL/Euljiro 1(il)-ga // TOKYO/Shinjuku // Nov.2006

here and there -ソウル/東京

 初めてソウルを訪れたとき仁川国際空港から市内へと向かうバスの中から見た光景を今も鮮明に憶えている。自分は今異国の地にいるという事実と眼の前を過ぎて行く光景を一致させることができず、奇妙な距離感に戸惑っていた。なるほど実際にこの身を置いてみると当初予想していたようにソウルの街並は東京と瓜二つではなかった。むしろ道幅や建物の高さ、そこを行き交う人と人との距離、声の大きさ、バスやタクシーのスピード、そして何より街そのものの匂いなど、東京との違いを容易に認識できた。しかし、それにしても、どこかが確かに似ているのだった。
 あれから7年が過ぎ、私はソウルと東京を十数回往復して撮影を続けて来た。先に述べた奇妙な感覚の要因は、当初その類似性にあると考えていたのだが、行き来を重ね、写真を通して二つの都市を見つめ続けるにつれ、むしろ互いに似ているものの中に潜む幽かな差異のなかにこそ言いようの無い連続性と切断が存在し、奇妙な距離感はこれに因って引き起されるのではないだろうかと考えるようになった。当初はソウルと東京を別々に作品化していたのだが、この距離感を写真化できればと、次第にソウルと東京それぞれで撮影した写真を一つのイメージとして組み上げるようになった。それは同時に写真的遠近法の不足や矛盾を補ってもなお一つの空間として認知しようとしてしまう「見る」ことが持つ不可思議な力の発見でもあった。
 離反しつつも互いに惹かれ合うかのごときこれらの写真群を通して二つの都市の類似と差異が織りなす問いの一端が提示出来たとしたら何よりの幸せである。

溝部秀二 みぞべ・しゅうじ

1966年 大分県生まれ
1989年 東京理科大学 理学部 応用物理学科 中退
1999年 東京綜合写真専門学校 卒業

個展
2003年 「ヒア アンド ゼア / 여기와 거기」 Days Photo Gallery / 東京
2006年 「here and there−こことそこ / 여기와 거기」 新宿ニコンサロン / 東京
「here and there−こことそこ / 여기와 거기」 大阪ニコンサロン / 大阪
2009年 「여기와 저기 / here and there / こことそこ」beansseoul gallery / ソウル
「here and there−ソウル / 東京」 コニカミノルタプラザ / 東京

グループ展
1999年 「眼差しに指し示す」 GALERIE LE DECO / 東京
2001年 「翻訳−写真における形式化の試み (TORUSU 企画展) 」 GALERIE SOL / 東京
「3つの部屋−写真へのイントロダクション (TORUSU 企画展) 」 淡路町画廊 / 東京

写真集
2009年『here and there - ソウル/東京』(ZOSH)

第22回写真の会賞 受賞パーティーのお知らせ

2010年7月10日(土)17:00〜
場所:Place M
会費:2,000円

受賞作をご覧になりながらのパーティーです。
どなたでも参加できます。持ち込み大歓迎。
会場で「写真の会」会報68号を参加者の皆様にお渡しいたします。


写真の会、写真の会賞について

「写真の会」は1988年、丹野清和、柳本尚規、大島洋、西井一夫が中心となって発足した。各写真賞にはない独自の視点で、自分たちで賞金を工面して賞を出し、受賞パーティ−を開き、受賞者と楽しく飲むことが当初のイメージだった。

写真の会賞は作家賞ではなく、写真的行為に対して出されるもので、実際に、製版や印刷の仕事の担当者である野口啓一や吉田寛(第8回)、また、ロバート・フランクの写真集の編集者である元村和彦(第9回)に賞が贈られた。写真批評メディアが壊滅的な状況下、広い視野からの写真表現の観察および理解を目的にしているが、その具体的活動として、若手写真家の写真を見ながら本人に直接話を聞く機会や、受賞者のインタヴューの場を設けたりしている。
公式ページへ http://shashin-no-kai.com/

ミニギャラリー Mini Gallery

同上

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