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2016.10.3-10.9

佐藤圭司 Keiji Sato

バンコク色景色(バンコクいろげしき)

同時開催
バンコク街景色 5(バンコクまちげしき 5)
バンコク夜景色(バンコクよるげしき)
佐藤圭司 Keiji Sato [バンコク色景色]
佐藤圭司 Keiji Sato [バンコク色景色]
佐藤圭司 Keiji Sato [バンコク色景色]

バンコクは夜の街と言ったら言い過ぎだろうか。

夜7時を過ぎると、どこから現れたのか昼間には無かった屋台の店がそこらじゅうに湧き出てくる。鉄パイプを組んでシートを張り、商品を陳列する台を並べあっという間に商店街が出来あがってしまう。

昼間の間はビジネスマンが行き交う街が、夜には別の顔に変貌する。閑散としていた色街は、それまで死んでいたかと思うような精気の無い顔から突然艶めかしく怪しい顔になる。

バンコクには所謂風俗遊びができる様々な形態のものがある。その中の一つにゴーゴーバーと言うものがある。そのゴーゴーバーが集まった地域がいくつかあるのだが、今最も活気があるのはソイカーボーイとナナプラザであろう。この場所に入れる男は、外国人に限られるという制限のある地域だ。

ゴーゴーバーとはステージの上で水着姿で踊る女性を見ながら酒を飲むことが出来るバーだ。気に入った女性が居れば、指名して自席に呼ぶこともできる。客が飲む酒は、ビールなら100Bからせいぜい180B程度だ。自席に呼んだ女性には飲み物を奢ってあげるのが一般的で、その場合の飲み物、LDは客の飲み物の倍くらいの金額になる。LDとはLadys Drinkの略だ。LDの中には店が受け取る純粋に飲み物代と女性が受け取るチップの部分を含んでいる。

2015年から2016年に掛けて円相場はかなり動いたので、対バーツの相場も1Bが3.5円くらいから3円程度の幅で動いている。

つまり、LDは600円から1000円程度のものだ。その半分程度が女性の取り分となる。しかし、実際は彼女たちはそれでは生活は出来ない。女性達は奢ってもらい、一緒に酒を飲んで更に客からチップを貰うのだ。その相場は200Bからせいぜい500Bだろう。もちろんそれでも大した金額にはならない。

ゴーゴーバーの本当の遊び方は、女性をお持ち帰りすることにある。

自席に呼んだ女性は、持ち帰って欲しいとあの手この手で男をその気にさせて交渉をしてくるのだ。店のフロア係りもママもマスターも総勢で、持ち帰りを勧めてくる。

女性を持ち帰りすることをペイバーという。店に一定の金額、せいぜい600Bくらいを払えば店外に連れ出すことが出来る。その後は食事に行くのか、飲みに行くのか、自分のホテルに持ち帰るのかは女性との交渉次第となる。もちろんタダではない。

そうして、彼女たちは生計を立てているのだ。僕は、何人かの女性達にインタビューを試みた。

フーちゃんはコーンケーンに実家があると言う。東北部のそこそこおおきな田舎町だ。ヌンちゃんはチェンマイ出身だと言う。日本語がとても達者なネコちゃんに聞いたところ、多くは東北部、イサーン地方から出稼ぎに来ている女性が多いと言う。ほとんどは田舎に両親、兄弟が居て一族を養っているというのだ。

タイでは家族の繋がりが非常に強く、一人の稼ぎ手が一族を養うのは普通のことだという。娘を一人でバンコクの都会に出して、そういう風俗の仕事をしていることについて、家族はどう思っているのだろうか。はっきりは答えなかったが、知っているけど知らない振りをしているのが実情らしい。

僕は、日本からやってくるエロジジイイ達を嫌悪していた。しかし、彼女たちに話を聞くうちに少し考えが変わった。

彼女たちは、これが仕事で相手が日本人だろうと何人だろうと関係なく相手にしなくてはならない。そのお客の多くはファランだという。ファランとはフランス人の意味から派生した白人全般を指す言葉だ。

パイバーされて連れて行かれる訳だから、時には危ない目に会うこともあるという。日本人が相手の場合、安全で親切で金払いもよく最高のお客さんだというのだ。

僕がバーの席に座ると必ず「日本人か」と聞かれ、フロアー係りにニッコリされた意味がわかったような気がした。

立場を変えてものを見ると、物事の善悪に関する認識がゆらぐことがある。日本からやってくるエロジジイイ達を是認することはないが、僕のなかで嫌悪感が薄らいでしまったのは確かだ。

僕は、1杯か2杯のビールを飲んで、彼女たちに飲み物を奢り、いろいろ聞き出しては写真を撮るだけで店を後にする、あまりいい客ではなかったようだ。

僕に話をしてくれて、写真を撮らせてくれた彼女たちに、この場を借りて感謝の意を表したい。ありがとう。

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