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子供の頃、というより物心付く前、僕は親父に肩車されて家路に着いていた。それは病院へ行った帰りというのは覚えているのだが、それ以外の記憶はない。ただ、何か特別な出来事があったという自分の中のショックと、普段見慣れていない「肩車」の高さから見た情景が、尋常でない出来事としてかすかな記憶に残ったのだと思う。

恐らく、多くの人は幼い日に親の肩車から普段見慣れていない風景を見た経験があるだろう。しかし、それを覚えていたとしても、極わずかな断片、その多くは記憶の彼方に失われていると思う。

そのとき僕がどんな風景を見たのか、それを知ることは決して出来ないが、今、少し背伸びをして世の中を見渡して見ることは出来る。僕は少し背伸びをして、もっと背伸びをして、ノッポになって世の中を見渡してみた。

(佐藤圭司)

大四切サイズのディジタル・カラー作品計30点を展示。

佐藤圭司
さとう・けいじ

千葉県生まれ。

個展:
2001年 「僕のグラフィティ」(銀座キヤノンサロン、東京/札幌、仙台、大阪を巡回)
2003年 「The Filmed Feeling」(PLACE M、東京)
2005年 「Through The Smoked Glass」(コニカミノルタプラザ、東京)、ほか

ホームページ:
http://www.kbox.jp

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